みんなで書こうよ、ファンレター(改訂版) ~第五編・これに気を付けよう~

この記事は、ファンレターを当アカウントの中の人が書く際、個人的に定めていた基準をいくらか汎用的な内容に再編して、公開したものです。
難しく考える必要はありません。ファンレター、みんなで書きませんか??

1.概要

1-1.記事の構成について

全ての事項を一度に書こうとすると大変な文章量になってしまって、読み辛くなってしまう事がわかりきっているので、以下の通り、合計で七編に分けて公開します。

第一編・概要
第二編・一般事項
第三編・基本的な作り方
第四編・本文の書き方
第五編・これに気を付けよう←現在開いているのは、この記事です。
第六編・より良くする為に
第七編・プレゼントの選び方

1-2.参考文献

作家・画家の先生へファンレターの送り方|青い鳥文庫|講談社BOOK倶楽部
声優にファンレターは届くのか?ルールやマナーは? | 幸田夢波のブログ
売れない声優がもらってありがたかったプレゼント | 幸田夢波のブログ
推し声優を応援する時のポイント | 幸田夢波のブログ

5.これに気を付けよう

5-1.国際郵便

ファンレターを国外へ郵送したい時は、マナーは国内と同じと思い込まずに、国際郵便に関する一般的な事項や相手国の習慣・文化・マナー等を最初に調べてからファンレターを書きましょう。ファンレターを書いた人の国の文化と、受け取る相手の国の文化が同じとは限りません。

5-2.うっかり忌み言葉を使わない

これは常識の範疇ですが、念のため。
ファンレターを送る相手にも拠りますが、言葉を大切にしている事が多いと思われますので、忌み言葉を使われると気になる方も居ると思われます。意味があやふやな単語に関しては、辞書などを活用して適切な文章となるよう努めましょう。

5-3.言葉が行間を跨がないようにする

特に、相手の名前が行間を跨いでしまうと失礼なので注意しましょう。このほか、可能であればお祝いや感謝の言葉は一行でまとめます。結婚を祝福する文章の場合は、本来は句読点を使わない方が良い、などのマナーも有りますので、こういったポイントも押さえておきましょう。

5-4.相手のイメージを強く固定化させない

ファンレターで、毎回同じ作品や過去の作品の事ばかり書いて、相手を特定のキャラクターで縛ってしまう行為は避けましょう。ファンレターで 触れていない作品に関して「新たな表現が出来ていない」と不安にさせてしまったり、悩ませたりしてしまいます。

ファンレターは書く度に出来るだけ違う作品の事に触れて、世界観に引き込まれた、という主旨の内容を書くように努めましょう。

ただし、相手が思い入れがある、と発言しているキャラクターについてはタイミングを見計らって表現した事を忘れてないし、私にとっても大切ですよ、という主旨で書いても問題ありません。

5-5.適切な距離感

「相手は一人(または少数)に対し、ファン側は多数である」という事実を肝に銘じ、相手とは適切な距離を保つよう意識しましょう。

相手へ何か良い影響を与えた気がした時、残念ながら大抵の場合は「貴方の手柄」ではありません。どうしても気になってその事をファンレターに書きたい、という時は「勝手な勘違いだと思うけど、喜んでいる人がいる」という事を明記しましょう。

逆に迷惑行為は、法に反するもしくは注意事項などを明確に違反しているならば言語道断ですし、それらに書かれていないが一般的には問題行為だと捉えられやすい行為(グレーゾーンの行為)は、「他にも多数のファンが迷惑行為をやれば、凄く鬱陶しい」という発想で、適切な距離感を保つようにしましょう。


コラム:貴方のルール違反、マナー違反が相手を苦しめる

これは、某舞台を観劇した時に見かけた話です。

その舞台では、ナレーションを某声優さん(仮にCさんとする)がやっていて、舞台挨拶にもCさんが出演されていたのですが、挨拶の時に客席の最前列に居る人物がCさんだけを指して「かわいい」という主旨の言葉を叫んで(それも連呼)して居て、その様子は傍から見ていると非常に見苦しいものでした。

舞台はライブなどと違って客席から叫ぶものでは有りませんし、いわゆる「認知」を目指す場所でも有りません。舞台は上演中、舞台と客席が一体となり作品の情景として溶け込んだ空気感が大切であり、そして舞台挨拶もあくまで「挨拶の場」ですので、普段は舞台を観劇している、という方々からしてみると「叫ぶ行為は流石に如何なものか?」と言われるでしょう。*1

そもそも、舞台と最前列の距離は数メートル程度しか離れていないのに、Cさんだけを指して「かわいい」と叫ぶという行為は、Cさんにとって気まずいだけだったり、叫ばれる事でストレスを感じていた可能性も有ります。*2

仮に、貴方が上記と同じ様な行為をした上でファンレターを書いて郵送した場合、相手はそのファンレターをどう思うでしょうか?読んでくれる、という自信を持つ事が出来るのでしょうか?

相手が楽屋で恥をかく事がない様、これから参加するイベント(特に、普段とは違う分野の場合はなおさら)のルールやマナーは、完璧でなくても構いませんから、事前に調べてTPOをわきまえましょう。*3


5-6.相手の言動を無暗に否定しない

何も考えずに、相手の言動を否定する言葉を投げかけたり文章を書く事は、自分への否定的な印象を作ってしまうだけです。
少し言い回しを考えてください。同じ内容でも印象が変わってきます。

以下に、書いては行けない内容と改善例を書きます。

5-6-1.現地に行けない、見る、聞く、読むのを辞めた

趣味に使える時間や資金、応援の方法は人それぞれなので、行けない(行かない)事や見ない、聞かない、読まないこと自体は問題ありません。しかし、わざわざそれらの事実を伝えても、相手は実力不足と感じて気にしてしまうおそれが有ります。

地方在住など遠方に住んでいて、イベントに殆ど参加出来ずに悔しい思いをしている事もあると思いますが、このような場合でも「行けない」とは書かずに、遠方に住んでいる事を逆手にとって遠い場所からも応援している事を書きましょう。

改善例として「○○と××に参加します」、「(住んでいる地域)から応援しています」、「ライブビューイングで観ていました」が挙げられます。

5-6-2.買えなかった

準備不足と感じて気にする人が居ます。わざわざ相手のやる気を削ぐような言い方をしても誰も得はしません。

改善例として「買いに行ったら既に完売でした。大人気ですね!」が挙げられます。

5-6-3.髪形や服装が似合ってない

髪形や服装については個人の好みが出やすいと思われますので、もっとも慎重にならなければ行けません。下手をしたら、ただのセクハラにもなります。

改善例として「周りでは最近見かける髪形がとても好評ですが、私は○○な髪形も似合ってると思うので、お見かけ出来たら嬉しいです」が挙げられます。

5-6-4.太るよ、肌が荒れるよ

例えば夜食の様子を知った時に、どう考えても相手が気にしているのに「太る」「肌が荒れる」などと伝える事は、善意のつもりであっても余計なお節介にしかなりません。

この辺に関しては余計な事には触れず、「美味しそうですね!どんな味ですか?」と聞く程度に留めましょう。

5-6-5.雑誌の切り抜きを保管してる、〇〇さんが一番かわいい

相手を褒める時、第三者を貶めている様に捉える事が出来る文章を書いてはいけません。特に、相手を褒めようとして明確に誰かを貶めるような事を書いてしまった時、相手と貶めた人物の仲が良い場合は、かなりの反感を買ってしまいます。

改善例として「皆さん良くお似合いです!〇〇さんは~(具体例)」が挙げられます。

5-6-6.こうしなくてはダメ、才能がないね、下手だね

例えば、相手が貴方と同じ趣味を始めた事を知った時、何かを強制したり出来上がり具合を貶めたりしてはいけません。善意のつもりでも、相手が善意だと受け止めるとは限らない為です。

例外は、相手が質問をblogやSNSで書いた際にそれへの回答を書く、安全面に関して「これは危険だから、こうした方が良い」という主旨の内容です。

改善例として「私と同じ趣味を始めたと聞いて、嬉しくなりました」が挙げられます。

5-6-7.専門家気取りで、アレコレ書く

世間一般と相手が居る業界では、常識が異なる部分も少なくないと思われます。相手が専門とする領域で、分かったつもりで何かを教えるかのような書き方をすると、単純に貴方が恥をかくだけです。

何かを教える事の例外は、相手が公表されていないイベントの情報をblogなどでうっかり書いてしまっている場合に、周りにはあまり分からないように教えるような場合でしょう。

5-6-8.いわゆる「ウケ狙いで相手をイジる」

相手からしたら「距離感が分かってない」と思うだけですので、特にスベる事がわかってる人はやめましょう。*4

5-6-9.出演作降板で感情任せに批判

例えば、相手がパーソナリティを務める有料会員制のラジオ番組で相手が降板する、もしくは番組自体が終了するような場合、感情任せに番組関係者の誰かを暗に批判するような文章を書いてはいけません。

ラジオを降板したり番組自体が終了する場合は、一般的に収益面が大きく影響しているものと思われますが、相手に何らかの公表できない事情(例えば、脅迫やストーカーの被害に合っていて、安全面を考え降りざるを得ない、そのほかプライベートの事情など)が重なっている可能性も十分に有り得ます。

こういった事情が重なっている可能性も考慮すれば、番組関係者の誰かを攻撃するような言動をとるのは、相手の事を傷つけてしまうおそれがあるので、冷静に状況を考えましょう。

5-6-10.過去の作品は知らない

過去の作品の事を知らない事は何ら問題ありませんが、ただ単にその事を伝えてもあまり意味が有りません。

文章構成上、どうしても必要な場合(例えば、相手が過去の作品の事について語った時の感想)は、「過去作品より後で、新規に増えたファンで有る」を強調したり、「過去の作品にも遡って触れているが、リアルタイムで触れていた人達とは違った体験になっていると思う」などと書くと良いでしょう。

5-6-11.相手が、過去に関わった作品を忘れたと思える発言を批判

言葉を部分的に切り取ればそう聞こえる場合も、全体をよく聞けば「前に進み続ける」という意思表示という場合もあります。無暗に批判する前に冷静にどのような意味での発言なのか確かめるか、もしくは質問するほうが良いでしょう。

上記に関連し、失言になりそうな場合に注意を促したい時は「○○さんが××と誤解されてしまうのではないかと、心配になりました」と書くと、相手も受け入れやすくなります。

5-6-12.相手へ理想を押し付けない

ファンレターへ、貴方の理想を相手に押し付けるような内容を書く事はやめましょう。相手へ必要以上のプレッシャーを与えるので避けるべきです。また、相手が貴方の意思に沿わない事をしたように感じても、不適切な手段(脅迫など)を用いて抗議してはなりません。

5-6-13.相手が不快な行為を受けている時、その事に触れる

例えば、相手が第三者から不快な行為をされている事を知った場合、余程の理由が無い限り、ファンレターでその事に触れてはいけません。例え励ますつもりでも、相手は不快な出来事を思い出したり、無意識にあなたへ不快な印象を紐づけてしまったりして、逆効果になるケースがあります。

逆に、あなた以外の人間が相手の事を褒めていた事を書くのは、貴方の印象はより良いものになる可能性が高まります。

5-6-14.個人的なお願いや悩みを書く

質問や悩みを書く時は相手が回答に困らないよう、個人的な内容は避けましょう。

質問や悩みは、相手がblogなどに回答を書ける程度の内容(第三者が読んでも問題ない内容、例えばお手入れに何を使っているのか等。悩み事に関しては、その内容が笑い話で済むレベル)であれば、話題を提供する意味でも書いても問題ありません。

なお何かの懸賞に応募した話を書いている訳でもないのに、「直筆サインが欲しい」などと書くと、相手は「単なる迷惑な人」と認識するだけですので、やめましょう。

直筆サインなどの懸賞や読者アンケートのハガキやメールは、当選する為ではなく「相手はとても人気がある!」と、関係各所へ知らせる為にばら撒くものです。

5-6-15.他の作品に似ている、思い出す

相手の性格にも依りますが、第三者の作った作品に似ている(若しくは思い出す)という感想をそのまま書く事は、余り勧められません。

明らかにオマージュやパロディと判断できる場合は良いですが、そうでない場合、相手は「安易な言葉で片付けている」や「盗作と非難されている」と感じて、逆効果になるケースが有る為です。

5-6-16.SNSやblogの更新が遅い

SNSやblogは事務所等と相談しながら運用している事が少なくありません。事務所等が管理していて、相手には主導権がない場合もあります。

これは外部に公開できない、もしくは公開するタイミングが難しい情報を沢山扱っている為です。更新が遅いと感じても、上記のような事情があって柔軟に発信できない事を忘れないようにしましょう。

5-7.他社の作品に関する感想は書いても良いのか?

歌手などのようにレーベルを、漫画家や作家のように出版社を複数に跨る形で活動している場合、例えばD社の作品に関する内容を、E社を経由(この場合の経由とは、E社が不審物の確認として、ファンレターを一度開封する場合を言う)するファンレターへ記載するのは、出来れば避けた方が良いでしょう。触れるとしても最後の数行で簡単に書くのが無難です。

これはファンレターに限らず、ファンクラブの掲示板や相手への質問コーナーなども同様です。特に相手への質問コーナーだと、相手は回答方法に困る事になってしまいます。


コラム:送付先は、本当にそこで良いのか?

これは、某演者さん(仮にFさんとします)の公式blogか何かで見かけた話です。

その方が或る時、公式blogへ「副業の方で公開している問い合わせ窓口へ感想メールを送るのは控えてほしい」という主旨の文章を掲載していました。

わざわざこのような文章を掲載するという事は、副業の方で支障が出ている(例えば、複数人が問い合わせ窓口へ感想メールを送る事で、副業の事務担当者の業務量が意図せずに増えている)事を示唆しているのではないでしょうか?

もう少し踏み込んで某演者さん側の立場で考えると、本来の目的である副業の問い合わせのメールを見落とす可能性がある事、一緒に仕事している関係者の誰かに余計な負担がかかっている事なども気にして、わざわざこのような事を書いた可能性が有ります。

これを考慮すると、相手へ何か伝えたい事が有る時は、事務所等を経由してファンレターを送付する、ファンクラブでの質問コーナーなどを活用した方が、相手へ余計な負担を与えないし、印象も良くなるのではないでしょうか。


5-8.自己紹介で年齢を書く必要はあるのか?

某作家さんによると、若年層は比較的移り気な部分があって、気に入らないと途中で作品を読まなくなるものの、気に入ると周りに宣伝したり、他の作品にも手を伸ばす、年代が上がるにつれてシリーズが続いていると買ってくれるが、新しい作品には手を伸ばす事が少なくなる、という傾向が有るそうです。

その作家さん曰く、編集部に届くファンレターの年代の比率を見て、若いファンが多ければ短い作品を立て続けに、成人したファンが多ければシリーズが売れている間は続ける、という方針になる事が有るそうです。

この事を鑑みると、貴方に子供がいる場合「子供にも見せているが、気に入っている」という事を書いておくと、どんな作品も行けるという判断で、相手がマルチに活躍出来るチャンスを広げる事に繋がります。

5-9.差出人個人が写っている写真を送り付けない

差出人個人が写っている写真やメールアドレス、SNSのアカウントは原則として、送付してはいけません。相手や事務所等の方針次第では許容される可能性も零では有りませんが、通常はファンレターごと処分されるのがオチです。

写真に関しては、年賀状などで自分と一緒に配偶者や子供が一枚に写っている場合は大目に見てもらえる事が多いようです。なお、いわゆる聖地巡礼へ行った時の風景写真などは送付すると喜ばれるかも知れません。

5-10.回りくどい書き方や、専門用語を使わない

相手が理解できないファンレターを書いても、それは書いた事にはなりません。相手に伝わるようにやさしい言葉、簡潔明瞭な文章にするよう心がけてください。

5-11.誤字脱字は出来るだけ書き直す

特に役者などは台本などを読む時、文字を読み間違えていては仕事にならない(収録のやり直しや、舞台が台無しになる事もある)ので、読み間違えないよう常に神経を使っている人が多いと言います。

読めない漢字を事前に調べておくのは当然ながら、その場で渡された台本を読む時に読み間違いをしない様、普段から勉強している方も居るとの事ですので、これを考慮すれば誤字脱字があると直ぐに発見すると考えられますので、出来るれば書き直しましょう。

5-12.不確かな情報を元にファンレターを書かない

不確かな情報を元にファンレターを書くと、何かの拍子に「観てない・聴いてない・読んでない」が相手に分かってしまい、残念な気持ちにさせてしまう事も有るので、ちゃんと調べるなどして書くか、「他の人から聞いたのだけど」という文章で書きましょう。


次は第六編「~より良くする為に~」です。←続きはココをクリック

*1:というか、実際にそういう批判は存在している。

*2:後日、叫んでいたのはCさんの熱烈なファンを自称する人物だったらしいと聞いてひっくり返った。熱烈なファンを自称するならば、違う分野の趣味を持つ方々(この場合だと、普段は舞台を観劇する人達)がCさんへ興味を持つよう、特に慎重に行動した方がCさんからも喜ばれたのでは?

*3:他の分野へ土足で上がりこむようなマネをすれば、それは戦争になるだけである。

*4:当アカウントの中の人は「場の空気ごとスベらせるのはウチの専売特許」と公言するくらいには、イジる事を絶対にやらないと決めている。